
ここに見習いにきて、はや半年が過ぎたわ。ここでのわたしの仕事ったら、ホントに多いの。おうちのお掃除に洗濯に、食事の後片付け(ご飯はアルマ先生が作ってくれるの)・・・それから、植物たちの世話に畑仕事、ペットや森の傷ついた動物たちの世話でしょ。毎日やることがたくさんあって大変よ。魔女になるのも、楽じゃないんだってことね。
でも、その大変なのが楽しいと思う今日この頃のわたし。少しずつ、魔女らしくなってきた証拠なのかなあ・・
ほんとうにここにはいろんな人たちが毎日やってくる。魔女の知識やなんかをあてにしてね、村人やもっと遠くの町からも様々な人がやってくる。薬草をもらいにくる人、農作物の収穫のことで種の撒き時やお天気を相談にくる人、悩み事の相談で占いをしてもらいに来る人、それから・・・それからね・・・
日常のいろんなレッスンを経験して、ずいぶんわたし変わったし、すっごくおとなになった気がするわ。きのうとはちがうきょうのわたしって感じかしら? みんなや自分のためにがんばること、地球や自然を守ること、みんなのしあわせをお祈りするってことが魔女の仕事だってことがわかったわ。そして、そうじやせんたくなど、魔女がするいろいろなことが魔法だということもわかったわ。わたし、魔法って願いごとをかなえたり、奇跡を起こすものだと思ってたんだけれど、そういうことばかりじゃないのね。

サードディグリー
~ファーストステップ~

■植物の世話をする
メープル
「春の嵐も過ぎて、とってもおだやかな日がここのところ続いていますね。」
アルマ
「ほんとね。だんだん暖かくなって日ものびて、とっても気持ちいいわね。虫たちも土からはいだして、植物も新しい芽をのぞかせる季節だわ。あ、そうだわ。メープル、その壁にかけてあるカレンダーを見て、次の満月を調べてみて。」
メープル
「はい、先生。えっと、次の満月は……来週です。きょうが木曜日ですから、来週の金曜日が次の満月です。」
アルマ
「そう、来週の金曜日ね。ちょうどいいわ。それでは、メープル、さっそく次のレッスンに進みましょう。」
メープル
「はい!」

アルマ
「メープル、ここに二つの鉢植えがあるわ。この2つの鉢植えは去年の秋、同じ日に植えたチューリップよ。もちろん、種類も色も同じ。この鉢植えをあなたにあげましょう。もう、葉が育っているから、あとは花が咲くだけなの。いいこと、この2つの鉢植えを世話して、きれいな花を咲かせてね。これがレッスンです 。」
メープル
「えっ、それだけですか?」
アルマ
「ええ、それだけよ。」
メープル
「わーい、それならかんたんです。」

アルマ
「あ、そうそう。メープル、その二つのチューリップを育てるにあたって、大切な約束ごとがあります。わすれないで、きちんと守ってね。」
メープル
「はい、なんでしょう?」
アルマ
「一つの鉢植えは日のあたるいい場所において、お水をあげるときに必ず話しかけてあげてね。そうね、たとえば、『早くきれいな花を咲かせてね』とか『たくさん、お水を飲んでね』とか、そんな感じでいいのよ。一日一回だけではなくて、何度でも話しかけていいわ。それから、ときどき葉をやさしくさわったりなでたりもしてあげてね。けれど、もう一つの球根は、その場所とちがうところにおいて、そしてぜったいに話しかけたり、さわったりしちゃだめよ。」
メープル
「は、はあ。それだけでいいんですか?」
アルマ
「ええ、それだけよ。とにかく、きれいな花をさかせてね。楽しみにしてるわ。どちらか片方に花がさいたら、教えてね。」

よかった、かんたんなレッスンで。もっと、むずかしいこと言われるかと思っちゃった。なあに、かんたんよね。チューリップを二つ育てるだけだもん。それに、一つには話しかけて、もう一つには話しかけないだけ。これって、ものすごくかんたんじゃない。
だけど、どうして、一つには話しかけて、一つには話しかけないんだろう? どういう意味があるのかな? うーん・・わかんないや。まっ、いっか。そのうち、わかるよね。

メープル
「先生っ! さきましたよ、見てください。」
アルマ
「まあ、すてき。メープル、とってもきれいなチューリップね。」
メープル
「はいっ、それはそれはみごとにさいたんです。こんなにきれいで大きなチューリップ初めて見ました。」
アルマ
「それで、メープル、この花はどちらの鉢植えかしら?」
メープル
「毎日、話しかけてあげた鉢植えのほうです。」
アルマ
「そう、それでは話しかけてあげなかったほうの鉢植えはどうだったの?」
メープル
「まだ、つぼみもつけてないし、気のせいかとても小さくて、弱々しいです。」
アルマ
「メープル、あなたはどうしてこの二つの鉢植えに、こんなにも差が出てしまったのだと思う?」
メープル
「???」

アルマ
「聞き方が悪かったかしら。では、質問を変えましょう。どうしてこちらの鉢植えはこんなに大きく育って、こんなにすばらしくきれいな花をさかせたのだと思う?」
メープル
「ええと、それはたぶん、日当たりのいちばんいいところにおいて、毎日やさしく話しかけ、なでなでしてあげたからだと思います。」
アルマ
「では、この鉢植えはどうしてまだ花がさかないのかしら? そしてこんなに小さいままなのかしら」
メープル
「きっと、水をあげるだけで、話しかけてあげたり、なでなでしてあげたりしなかったせいだと……あっ! やっぱり、そうなんでしょうか?」
アルマ
「そうよ、メープル。まったくそのとおりだわ。このきれいに花がさいたチューリップはね、なぜきれいにさいたのかというと、あなたが毎日やさしく世話をして、ふれてあげて、話しかけてあげるという、植物を育てるための魔法をかけてあげたからなの。けれど、この小さいままのチューリップには、あなたは魔法をかけなかった。だから、うまく育たないの。」
メープル
「ええっー! わたし、魔法をかけてたんですか? し、知らなかった……。」
アルマ
「これで、あなたも魔法を一つ覚えたことになるわね。」

アルマ
「さあ、植物を育てる魔法をマスターしたところで、その魔法をこれから思う存分発揮してもらうわ。自給自足が魔女の基本なのよ。きょうはちょっとくもってるけど、土づくりには問題ない天気ね。さあ、メープル。これから畑づくりをするわよ。」
メープル
「はーいっ。」
アルマ
「わたしがたがやすから、その肥料をその場所にまいてね。」
メープル
「はいっ。わっ、でもこの肥料、においます。」
アルマ
「そうね。でも、土には大切な栄養分で、植物たちの大切なごはんでもあるのよ。」
メープル
「植物のごはんですか?」
アルマ
「そうよ、わたしたちが毎日ごはんを食べるように植物にもごはんが必要なの。植物の生育にお日さまとお水が大切なのは知ってるわね。そして、いちばんかんじんなのが植物が根をはるこの大地なの。ここがしっかりしていないと、ちゃんと育ってはいかないのよ。ここはね、去年もお野菜が育ってたの。そのお野菜がたくさんごはんを食べてしまったあとだから、いまはもうごはんがほとんど残ってないのよ。だから、土をきれいにしてごはんもたくさんあげておかないとね。」
メープル
「へえ、そうなんですね。」

魔女は自然と仲良くして暮らすことを大切にしています。だから、大地や自然を守ります。そして、同時に人間の生活を守ることも考えます。つまり、人間と自然がバランスよく共存していくことを考えて、そのお手伝いをしなければなりません。
緑のものたち・・・わたしたち人間は自然界にあるもの、そして植物からたくさんの恩恵を受けています。植物はわたしたちが一度すって吐き出した空気を、もとどおりのおいしい空気に戻してくれているのです。また、ほかにも植物は汚れた大地をきれいにしてくれたり、地面が崩れるのを防いでくれていたりします。わたしたちは、花を摘んだり、木を切ったり、食べられる植物や野菜を食料にしたりしています。ですから、木を切ったり、植物をとってそのままにしていると、やがて植物は無くなってしまいます。そして、植物のはえなくなった大地は荒れるばかりで砂漠になってしまうのです。
だから、植物がこの世からなくなってしまわないように、増やしていくことは、わたしたち人間にとっては大切な作業なんですよ。魔女は自然と人間のために積極的に植物を育てて、この世から無くならないように種をまき続けることをしなくてはならないのです

メープル
「そういえば、アルマ先生、質問があるんですけれど……。球根を植える前に満月のときにって言ってましたけど、満月と種まきとなにか関係があるんですか?」
アルマ
「いい質問ね、メープル。植物の生育と月の満ち欠けにはとても深いつながりがあるの。植物を大きく元気に育てたいならば、これはとっても大切なことなのよ。」
メープル
「とっても、大切なこと?」
アルマ
「ええ、そう。もし、植物をすくすくと育てたいなら、月が満ちていく期間に種まきをするの。満月に近ければ近いほど、月のパワーは強く増すものなのよ。月のパワーが増すとね、地球のこの大地のエネルギーもそれに呼応して、とても強くなるの。だから、その期間に種まきをすると、種は月と大地からのパワーをたっぷりともらうことができて、元気よく育っていくことができるのよ。その逆に月が欠けていく期間に種まきをすると、種はほんの少しのパワーしかもらうことができないから、元気がなくなってしまうの。」
メープル
「へぇっー、 そうなんですか? 知らなかったです。」

アルマ
「でも、月が満ちていく期間だからといって、いつも種まきに適している時期だとはかぎらないのよ。まずわすれてならないのは、それぞれの植物には種類によってまく時期があるということ。次に、地面が種をむかえいれる準備ができているかということ。」
メープル
「地面が種をむかえいれる準備……ですか?」
アルマ
「そんなにむずかしく考えなくてもだいじょうぶよ。たとえば、雪が降っていたり、霜が降りている地面はとても冷たいでしょう? 雪がとけて、霜も降りなくなって、春一番が過ぎて、地面がほくほくとあたたかくなりはじめたころとかね。夏の暑さが一段落して、ジュージュー暑かった地面がすずしくなっていごこちがよくなってきたころ、地面は種をもうだいじょうぶだよって受けいれてくれるの。」
メープル
「なるほど。」

アルマ
「メープル、土をたがやすときや肥料を与えるときに、いい土になりますようにって思うのよ。種や苗たちのおいしい土ができますようにって。」
メープル
「はいっ。」
アルマ
「終わったら、次に畑にはこうして両手をあてるの。こうやって、土をさわるのよ。」
メープル
「こうですか?」
アルマ
「ええ、鉢ものの場合には、両手を土に入れるの。そしてね、土がいっぱいいっぱい元気になるように、この土で植物が元気に健康に育ちますようにって、お祈りするのよ。土に話しかけるようにね。」
メープル
「はいっ、やってみます。」

アルマ
「さあ、いよいよ、きょうは種まきよ。いいこと、種をまく前にこうしてね、種を片手にのせてもう片方の手で包みこむようにおおうの。やさしく、そっとだきしめるようによ。苗の場合は植えつける前にね、根のところを両手でそっと包みこむの。」
メープル
「こうですか?」
アルマ
「そうよ。そうしたら、次にこう思うの。元気に、元気にすくすく育ってねって。たくさんたくさん、お花や実をつけてねって。」
メープル
「はーいっ。」
アルマ
「それからね、自分の中の愛をいっぱいいっぱいこの種にあげるのよ。大好きだよ、大好きだからねって。」
メープル
「な、なんか照れちゃいますね。」
アルマ
「ふふふ。だけどね、愛ってとても大切なのよ。愛されないとね、植物も人間もまっすぐ育つことができないんだから。最初にどれだけ愛をあげたかで、あとにこの子があなたにどれだけこたえてくれるかが決まるんですからね。そうね、たとえば、あなたがおなかがすいて食べたいときにほしいだけの実を生らせてくれるかどうか、とかね。」
メープル
「うわあ、とうもろこし、たくさん食べたい! そうしたら、愛をたくさんあげればたくさん食べられるんですね。よーしっ!」
アルマ
「……まあ、いっか。」
★レッスン9★
あなたも、自宅の庭やベランダ、室内などで植物を育ててみましょう。種類はなんでもいいのです。花でも、木でも、野菜でも、ハーブでもなんでもかまいません。その季節や育てる場所にあった植物なら、あなたが好きなものでいいのです。また、種から育ててもいいですし、小さな苗を買ってきてもいいでしょう。
そして、月の満ち欠けを調べて、それにあわせて土をつくりましょう。土に手をあててお祈りでパワーをあげて、それから種や苗にも愛情をたっぷりと注ぎましょう。元気にすくすくと育ちますようにと。そして、大好きだからね、と。


~セカンドステップ~

★物置の中のものを捨てずにかたづける
アルマ
「メープル、裏の物置のそうじと整理をお願いね。」
メープル
「はいっ、おそうじして整理整とんすればいいんですね。」
アルマ
「そうよ、メープル。わたしはあさってまで外出するから、帰ってくるまでに終わらせておくのよ。それから、物置の中はほとんどからっぽにしてね。ただし、なに一つ捨てちゃだめよ。これはわすれないでね。」
メープル
「えっ、なにも捨てないで、からっぽにするんですか?」
アルマ
「そうよ、なにも捨ててはいけません。それじゃあ、わたしはもう出かけるから。あとはよろしくね。」
メープル
「ええっー! それってどういうこと? それこそ、魔法でも使わなきゃ、できないことだわ。どうしよう、こまっちゃった……。」

とりあえず物置に来たものの……どうしよう……。ガラクタばかりだわ。これを捨てないでかたづけるって、どうすればいいの? べつの場所に移動する? でも、新しくガラクタ用の物置なんてつくること、わたしにはできないわ。それに、物置から物置に移動しても意味ないし。あーあ、弱っちゃったなあ。
あ、でもちょっと待って。これ、まだ使えそうな気がする。このランプ、ガラスは割れちゃってるけど、残ってるガラスをきれいに取り除いて、とれてしまっているとってを直せば、ロウソクたてとしては使えるんじゃないかなあ?
それから、 このバケツ、穴があいているけど、植木鉢にちょうどいいかもしれない。うん、使える、使える。
それから、この時計だって、見るとすごくおしゃれだし、なんか捨てるのもったいない。わたしの部屋の飾りとしてなら、いいインテリアになるかもしれないわ。それとこのタンスだって、色をぬりなおせば、また使えるわ。この布切れ、よごれててボロだけど、ぞうきんになら使えるわ。
それからこっちのハギレはパッチワークにすればいい感じ。それとこれも、あれもなんとか直せばまだ使えるし、くふうして台所や庭のガーデニング用品として使えるものも少なくない。うん、そうすればゴミじゃないもんね。

アルマ
「ただいま。」
メープル
「おかえりなさい、先生。」
アルマ
「おやおや、物置はきれいにかたづいたようですね。どんなふうにかたづけましたか?」
メープル
「はい、まず物置にあったこわれた家具はペンキをぬったり、修理してみました。見てください、ここに置いてあります。」
アルマ
「まあ、すてきですね。」
メープル
「それから、古いシーツはぞうきんにしました。ハギレはパッチワーク用の布にして、ベッドカバーやテーブルクロスなどをミシンでぬいました。それ以外の古い衣類は、たくさんの古着をほしがっている人がべつの国にいるというので、そのボランティアをしている人たちにひきとってもらいました。それから、ついでに古切手もチャリティーの団体に郵送しました。こわれたぞうじ用具はガーデニングの飾りにしてみました。いらない本は図書館に、古新聞は燃やして灰にして、土にうめました。そうすると、植物の肥料になるからです。」

アルマ
「合格ですよ、メープル。とってもよくできました。あなたはとってもすてきな魔法を使いましたね。」
メープル
「ええっー、 わたしが魔法をですか?」
アルマ
「そうよ、あなたは魔法を使ったのよ。こわれたもの、使われなくなったもの、そしてしまわれて人間にふりむかれなくなってしまったもの、ゴミとして処分されてしまう予定のもの、これらは一度死んでしまったものたちなの。けれど、これらをまた使えるように直したり、必要な人のところにわたしてあげるというのは、ものにもう一度命を与えるということなのよ。それはとってもすてきなとっておきの魔法なの。」
メープル
「うわあ、わたし知らないうちに魔法を使ってたんですね!」
アルマ
「あなたもだんだん魔女らしくなってきましたね。」
メープル
「キャー、うれしいです、ほめられるなんて。」

アルマ
「今日から、いろんなものを使うとき、その道具や物のことをよく考えてごらんなさい。何でできているものなのか、ものはなんであったものなのか、どうやってできたものなのか、その道具を作ってくれたのは誰なのか・・・そして、その作った人がどんな思いでその道具を作ってくれたのか。いいこと、あれこれ想像して考えてみてね」
メープル
「いやあ・・この革のカバン、わたし 何も考えずにこんなに乱暴に使ってたんですけど・・・丈夫だからって。でも、これ牛さんの革で、このカバンになるために牛さん犠牲になってくれたんですよね・・・それに、これを作ってくれた人、たぶん一生懸命カバンをつくろうって、こんなに丁寧に作ってくれたと思うんですよ。なのに、わたしいままで何も考えたことなくて、こんなに汚して使ってしまってたんですね。そう考えたら、ああ・・なんかこんな使い方してすごく申し訳なかったなって思ってしまったんです」
アルマ
「そう。それに気づけたのね」
メープル
「ええ、だから、この牛さんともっと長く一緒にいたいと思いました。それから、これを作ってくれた人の気持ちがこもったこのカバン、その思いを大切にする意味でももっともっと丁寧に扱おうと思います」
アルマ
「ええ、メープル。物に対するその気持ちがとっても大切なのよ。これであなたも道具を特別な魔法の道具に使えることができるわね」
★レッスン10★
あなたも使えるものを捨ててしまってはいませんか? こわれてしまったもの、よごれてしまったもの、古くなってしまったもの、直せばまだ使えるものはありませんか? また、べつのものとして使うことはできませんか? 穴のあいてしまった服、着なくなった洋服、そのまま捨ててしまってもいいですか? ボタンやレースなど、なにか小物を作るときに使えませんか?
また、あなたがゴミとしか思えないものでも、ほかの人にとっては宝物であったり、寄付などをすることで喜ぶ人がいるものかもしれません。ゴミとして捨ててしまおうとする前に、もう一度それらの利用方法を考えてみましょう。


~サードステップ~

★魔法の道具を作る
メープル
「これ、先生が編んだものですよね。すてきですねえ。」
アルマ
「ありがとう、メープル。ほめてくれてうれしいわ。」
メープル
「そういえば、向こうどなりのマーガレットおばあさんが、アルマ先生にたのんだレース編みのショール、まだできないのかしらって、催促がありました。」
アルマ
「そう、もうしばらく待ってもらわないとね。あしたあやまりに行かなくては……。いまはまだだめなのよ。」
メープル
「??」
アルマ
「今の時期はそんなにいそがしいわけでもないのに、なぜ作ることをしないのかふしぎかしら?フフフ、魔女がものを作るっていうことはね、魔法をかけたものを作るということだからよ。」
メープル
「魔法をかけたもの?」
アルマ
「そうよ、ものを作るということは一種の魔法なの。だから、魔女がものを作るときは慎重にならなくてはいけないのよ。今はね、まだ魔法をかける準備が整っていないのよ」
メープル
「???」
アルマ
「そうだわ、ちょうどいいわ。今度のレッスンの課題はそれにしましょう」

またしても、アルマ先生から宿題をもらったの。今度は、ウルフとラズベリーのためにお守りとしての首輪をつくること、ですって! うーん・・・どうしよう。だって、お守りの作り方って、まだ教わっていないのよ。
でも、アルマ先生がいうには、これまでのレッスンですでに教えているし、身についているはずよ、とのこと。つまりは、今まで勉強したり、レッスンしたことの中にお守りを作るヒントがあるってことよね。
あー! わからない。それより、首輪ってどう作るんだろう? まず、そこから考えなくちゃ。ウルフー、ラズベリー、どんなのが欲しい? 教えてー。
ウルフ
「ウォン!」
ラズベリー
「ウニャーン・・・ゴロゴロゴロ」

ラズベリーの首にはリボンが結ばれているだけ。うん、そうしたら布地でもいいってことだわ。けど、ウルフの首輪は皮で出来ている。つまりは、丈夫なものでないとだめだということだわ。そうね、ウルフの首はとっても太いし、あちこち走り回るから、すぐとれてしまうようなものではきっといけないんだわ。それに、オオカミ犬にふさわしい、かっこいいデザイ ンでないとね。よしっ、まずはデザインから考えよう・・・
ふむふむ・・・とりあえずスケッチを描いてみる。こんなんでどうかなあ? うーん、作れるかなあ? もう少し簡単そうなのにしようっと。そのほうが無難だわ。でも、ここはこうしたほうがきっとおしゃれだし、似合うよね。うん、よし、できた! これで決まりね。

さて、次は材料探しだわ。とはいうものの、材料を買いに行ったなら、とても高くて手が出せないの。どうしよう。
あ、そうだ、物置。前に掃除したときに、壊れた革のベルトがあった、あれ使える。ラズベリーのリボン用の生地はなんとか買えたから、よかったよかった。
あれとこれとこれもそろえて、なんとか材料は揃ったわ。これで作れる。あ、でも待って。アルマ先生がお守りとかは月が満ちていく期間に作るんだって、前に教えてくれたんだわ。月のカレンダーを調べないと。
よしよし、あさってがちょうど満月だったわ。よかった、タイミングよくて。
ウルフとラズベリーのこと、ふと考えてみる。ここにきて、いつも一緒だった二匹。もう家族みたいなもんね。それから、わたしの大切なお友達。ウルフは森や外にいくとき、いつもついてきてくれて、私をさりげなく守ってくれる。ここは危ないよ、とか。まるでガードマンみたいなの。ラズベリーは甘えん坊で、なまけものでいつも寝てばかりいる。でも、わたしが病気をしたとき、傍に来てくれたり、落ち込んでるとき、なぐさめるように膝にのってきてくれる。二匹のいない生活なんて、もう考えられないなあ。お別れなんてぜったいにいやだもの。離れたくないなあ。いなくなったら、きっと寂しくて悲しくて泣いちゃうわ。ああ、いやだ。

二匹にはいつまでも元気でいてほしい。いつまでも、傍にいてほしい。心配だなあ、ウルフはとっても勇敢だから、森でクマとけんかしちゃったらどうしようって思う。ラズベリーもこの間、あやまって池に落ちちゃったことあるし。いやだなあ、ケガとか事故とか、そんなのには絶対にあわないで欲しい! いつまでも長生きして 、どうか危険な目に遭いませんように・・・そんなことから、この二匹を守ってあげたい。
そんなことをあれこれと考えながら、せっせと首輪とリボンを作ってみた。へたくそだけど、ちょっとデザイン画とは違ってしまったけど。リボンには刺繍をして、なかなか可愛いできかな、と思ったりする。

アルマ
「まあ、とっても素敵に出来たわね!」
メープル
「いや、その・・・失敗してしまいました」
ウルフ
「ウォッホン!」
ラズベリー
「ウニャーン!」
アルマ
「でも、二匹ともとっても満足そうよ。」

山ふたつ遠くの町に行くジンジャーさんに頼まれて、アルマ先生ったら、ウルフをお供に貸してしまったの。なんでも、ウルフはとても利口なので、優秀なボディガードになるからですって。一週間は帰ってこないとのこと。あーあ、なんかさびしいなあ。アルマ先生は、山に薬草を摘みに出かけちゃって留守だし。今日のお仕事は終わっちゃったし、退屈だわ。
ラズベリー
「・・・フッー! ムギャー! ナーゴっ!」
な、なにごと? ラズベリーのものすごい鳴き声がする。いったいどうしたの? あっ! やだ! 山猫がラズベリーのことを狙ってる・・・いやだ、どうしよう。いつもだったら、ウルフがいるから絶対近づかないのに、ウルフが追い払ってくれるのに、ウルフいないよーどうしよう! なぜにいないの、ウルフー! いやーん、アルマ先生。

アルマ
「きっとそれはね、ラズベリーが無事でいられたのは、魔女メープルの魔法のおかげね」
メープル
「えっ?」
アルマ
「この魔法のお守りがきいたのよ。メープルがかけた魔法はラズベリーを危険から救ってくれたんだわ」
メープル
「わ、私の魔法で、ラズベリーを危険から守ることが?」
アルマ
「ええ、ありがとう。メープル、わたしからもお礼を言わせてね。そして、あなたは魔法のお守りを作ることに成功したの。つまりはものに魔法をかけることができた。今度のレッスンも合格ね。」

前に、ものや道具と言うのは人が心をこめて使い、魂をこめるからこそ魔法の道具になるのだという話をしましたね。
魔女がものをつくるということは、この魔法の道具を作ることが第一の目的でもあるのです。たとえば、誰かが風邪をひいたとき、魔女は裏の薬草をつんできて葉をちぎり、その人の症状に合わせて薬草をブレンドします。そして、その薬草で風邪が治るように魔法をかけるんです。こうやって、薬草を両手でそっと包んで、「風邪がよくなりますように」ってね。これが魔女の魔法なんですよ。
編み物でセーターをつくるとき、その人があたたかくしていられるように、このセーターを着ているときは、いつもかならず神様から守られますように・・・って、そうお祈りしながら編むんです。これも魔女の魔法です。
ビーズやきれいな石をつないで、アクセサリーをつくるとき、そのアクセサリーがその人を守ってくれるように、その人がいつも愛に包まれますように、すてきな恋人に出会えますように・・って祈りながらひとつひとつのビーズを糸に通すの。そう、これも魔女の魔法ね。
刺繍やぬいものに針を刺すときも、ボタンをつけるときも、花びらを乾かしてポプリをつくるときも、香り水をつくるときも、お菓子をつくるときも、手紙を書くことも・・魔女にとっては魔法です。土で焼いたお皿をつくることも、木を彫ることも、絵を描くことも、かごを編むことも、庭を造るときも、すべてみんな魔法をすることなのよ。魔女にとってはね。
そう、だけどね。魔法をかけるってことは、そのときの想いをすべて込めるということになるの。だから、ちょっとでも、その魔女のなかに嫌な気分だとか、悲しい気持ちだとか、怒ってる気持ちがあったらだめなの。そういうものが心の中にあるとね、そのときにつくったものにその気分が入ってしまうから。そうすると、本当はその人が愛に恵まれますようにって、そういう魔法をかけたくて作った魔法の品なのに、悲しい気持ちが残っていたら、悲しい魔法がかかってしまう。それはとってもよくないことね。

だから、魔女は物をつくるときは、簡単には作らないの。
魔法をかけるときは、その魔法を邪魔する気持ちが自分のなかから無くなって、かけたい魔法のことで心も頭もいっぱいのときに作らなくてはいけないの。まず気持ちができあがって準備ができてからでないとね・・・そうでないと魂の入ったものはつくれないし、魔法だってまったく効かないものになってしまうもの。
メープル
「なるほど・・・・そうすると、先生はいま、魔法のショールを作るための準備をしているんですね」
アルマ
「そのとおりよ。お向かいのマーガレットおばあさんのために、素敵な魔法のショールを作りたいもの。いま、わたしの中にいっぱいいっぱい、愛を集めているところなの」
メープル
「だから・・手作りのものって、魔法がかかっているから、どれも素敵なんですね。持ってるだけで心があったかくなるのって、魔法のおかげなんですね」

ウルフ
「ウォン! ウォン!」
メープル
「あ、ウルフだ! ウルフが帰ってきました。」
ジンジャー
「ふう・・・こんばんは。そしてただいま、アルマさん、メープル」
アルマ
「お帰りなさい、ジンジャーさん。お仕事はどうでしたか?」
ジンジャー
「おかげさまで上手くいったよ。それより、スィートウォーターまでの峠道はいま山賊が出て大変なんだそうだ。」
メープル
「うわあ、それは怖い」
アルマ
「まあ」
ジンジャー
「だけど、ふしぎなことに、今回はクマにもそういった盗賊のやからにも会わないですんだ。やれやれという感じだよ。ウルフも活躍する出番なし、といったところだったかな? まあ、何事もないならそれが一番だがね」
アルマ
「そうでしょう、それはよかった。きっと、神様の守護と心強いお守りが身近にあったからでしょうね」
ウルフ
「ウオンッ!」
メープル
「えへっ!」

★レッスン11★
自分のもの、家族のつかうもの、友達へのプレゼント、をつくるとき、そこに魔法をかけましょう。気持ちをこめて、その道具やしなものが相手にとってよいものになるように願いを込めて・・・

おしまい
あなたは立派な魔女になれましたか?
全部のレッスンを終えたアナタには、卒業証書をあげましょう!