タロット
その秘教的意味
「占世界の占星術とオカルテストたち」
-20-机上の占星術タロット
山内雅夫 著 (自由国民社 刊)より抜粋
”十字軍を提唱して、アジアで殉教したマジョルカ島出身の天啓博士ライモン・ルル(1235-1316)が発明したアルス・マグナ(アルスコンビナトリア)=組み合わせ術は、いくつかの画面を組み合わせることによって、一つの結論を導き出す方法で、タロットの占い師がカードの配列よりから、隠されている真実を探り出す秘法の中世的理論化である。この方法は今日では心理学者がいくつかのカードを患者に見せて、心象を語らせるロール・シャッハ・テストや各項目をセグメント毎にカードに書いて、論理の展開を整える川喜田三郎の発想法の先駆というべきものであろう。なぜ、タロット占いが的中するかの謎は、この近代的心理テストが、中世的な粉飾の下で行われるからに他ならない。”
タロットカードの起源
主要参考文献 「世界の占星術とオカルチストたち」山内雅夫著 自由国民社
タロットカードが使用された記録としては、オーストリアで12世紀、ルーマニアで14世紀、ドイツ、スイス、ベルギー、フランスでは14世紀のものが残っています。
タロットカードの起源、詳細な歴史はわかっていません。
その理由として、中世に、当時の教会がタロットを異端思想として排斥したという宗教的背景があります。中国の文化大革命と似たようなもので、それによりあらゆるタロットカードが美術的・歴史的価値に関係なく焼き払われたので、それ以前のカード及びタロットについて書かれた書籍の大部分が失われてしまいました。
もちろん、全てが失われたわけではなく、迫害を逃れたものもあったと思われます。フリーメーソンの会員で、フランスの知識人クール・ド・ジョブラン(1729-1784)は、その著書「新世界に対比し分析した旧世界」の第8巻を「タロットの名声」として、タロットカードについてあれこれ述べています。
その著書の中で彼はタロットのことを”エジプトの書”と呼んでいます。今よりは当時以前の書物があった18世紀のこと、詳細な資料や情報がジョブランの手元にあったものと思われますので、機会があれば一読してみて下さいまし。
タロット・カードの原画は、エジプトはサラ・ベイオンの神殿に秘法を説いた壁画として描かれていたものだそうで、異教の神を崇める神殿とされて破壊されそうになったとき、祭司が壁画の掟を絵に写しとったものである・・ということです。そして、彼ら祭司たちは、故郷を離れて、諸国を放浪し、いつしかジプシーと呼ばれるようになったとも伝えられています。
ローマのアタナシウス・キルヒヤーが発表した「オイディプス・アエギピクタス」(1650年代)によると、このエジプトの祭司たちによって写しとられた壁画は、”ベンバイン・タブレット(イシス表)”と呼ばれるそうで、信徒に秘法を伝えるために用いられていたということです。ちなみにこの”ベンバイン・タブレット(イシス表)”は、トリノの古代博物館に所蔵されているとの事。
エリファス・レヴィによると、”ベンバイン・タブレット(イシス表)”はタロットに描かれている「トートの書」の秘法を解く鍵だということです。
”ベンバイン・タブレット(イシス表)”
縦30センチ、横50センチのブロンズの板。上部は12サインが3サインごと四季に区分されている。中央は7つに区分され、21の記号がある。下部は4つに区分され、4つの方角が示されている。
現存する最古のタロット
確認されているタロットカードの一番古いものは14世紀、フランス国王であるシャルル6世が画家のジャックミン・グランゴヌールに発注したタロット・カードで、17枚しか現存していませんが、パリの国立図書館に所蔵されているそうです。
有名なものでは15世紀のもので、全デッキはないものの、74枚のみが現存しています。一部がニューヨークのピヤモント・モルガン図書館に、残りがイタリア・ベルガモのカララ・アカデミーとコレオニ家といったふうに分割して所蔵されています。
このタロットデッキはイタリアの画家ボニファチオ・ベンボの手によるもので、一般にはヴィスコンティ・スフォルツァ・デッキ・・・ヴィスコンティ家のタロットと呼ばれています。ちなみに図版が複製されて出回っていますので、このカードの入手は簡単です。
(ヴィスコンティ家といえば、イタリアでは名門貴族の家柄で、映画監督の故ルキノ・ヴィスコンティもその末裔にあたります)
このコレクションにつぐもので有名なのが、アメリカのエール大学にあり、このデッキはケーリ・コレクションと呼ばれています。ちなみに67枚が現存していますので、14枚不足しているコレクションという事になります。
その他にも、バラバラではあるものの、博物館などに陳列・保存されているタロットがあったと思いますが、ちょっと忘れてしまいました。詳細資料が手元にないんで・・・ごめんなさい。
カードの構成
タロットカードは全部で78枚(それ以上のもあるが)あり、メジャーアルカナ(大秘法)とマイナーアルカナ(小秘法)の2段階から成り立っています。
さらにマイナーアルカナは、4つに区分され、コートカードと数札から成り立っています。
メジャーアルカナ・・・22枚(0~21番目のカード)
これは我々人間の魂が存在していく中で出会っていく全ての物事を象徴的に表したカードです。肉体の誕生と死という一人の人間の経験する出来事をも超越えた、一つの魂の変遷と進化という、宇宙のプログラムの全てを表していて、あらゆる魂が経験しなければいけない、悟らねばならない様々な出来事をシンボリックに暗示しています。つまりは我々が経験し、立ち向かわなければならない教訓を示唆しているのです。
マイナーアルカナは本人の意志や感情によって引き起こしていく行動パターンなのですが、メジャーアルカナはこのマイナーアルカナによって積み重ねられた現世的な行動が、結果としてその上の世界に反映されたことでもあります。
そうですね、簡単にいってしまうと、マイナーアルカナは本人の自由意志で引き起こしている出来事で運命以前の問題。けれども、メジャーアルカナは日頃の行いから積もり積もってそうなった運命といいますか、周りも巻き込んで決定してしまったカルマみたいなものです(この説明で解るかしら?)
マイナーアルカナ・・・56枚
メジャーアルカナが宇宙的時間・空間の中での魂への教訓を表しているのに対して、マイナーアルカナは物質的なものから生れる悪しきものと良きものを表しています。つまりは人間というものが起し、この世に創り出す罪と美徳など。この世で生産できるもの、破壊しうるもの、人間の中に生れる感情と感覚、理性、思考、想像、創造、文明、文化などなど・・・人がこの世に創り出すもの、全てです。妬みや恨み、よこしまな願望、嘘、病気や貧困、身分、愛や友情、美しいもの、綺麗なもの、努力と希望と・・・など。
メジャーアルカナが宇宙の秩序とルール、自然の摂理や神のプログラムなら、マイナーアルカナはその下にある人間が決めていく人間社会のルールや人間自身に属するものすべて。
4区分(スート)
ワンド ・・・中世の階級では農民
スォード・・・中世の階級では貴族
ペンタクルス(コイン)・・・中世の階級では町人
カップ・・・中世の階級では僧侶
コートカード(コートとは宮廷という意味。今日では人物札と呼ばれてしまっている)
キング(君主)
クイーン(女王、君主の妻)
ナイト(騎士)
ペイジ又はプリンセス(君主と妻の子又はお小姓)
数札(1~10)
ちなみにマイナーアルカナに愚者をジョーカーとして加えたものがトランプの原型です。ナイトとペイジは合体させられ、ジャックと名前が変わりました。
ワンドはクローバー、ソードはスペード、カップはハート、ペンタクルスはダイヤのカードという風に。
また、コートカードにはそれぞれモデルがいたりします。
占星術との対比
メジャーアルカナ
トート エジプシャン系
0 愚者 天王星(風) 愚者 冥王星
1 魔術師 水星 魔術師 水星
2 女司祭 月 女司祭 処女宮
3 女帝 金星 女帝 天秤宮
4 皇帝 白羊宮 皇帝 天蝎宮
5 司祭 金牛宮 法王 木星
6 恋人 双児宮 恋人 金星
7 戦車 巨蟹宮 戦車 人馬宮
8 力 獅子宮 正義 磨羯宮
9 隠者 処女宮 隠者 宝瓶宮
10 運命の輪 木星 運命の輪 天王星
11 正義 天秤宮 力 海王星
12 吊るし人 海王星(水)吊るし人 双魚宮
13 死神 天蝎宮 死神 白羊宮
14 節制 人馬宮 節制 金牛宮
15 悪魔 磨羯宮 悪魔 土星
16 塔 火星 塔 火星
17 星 宝瓶宮 星 双児宮
18 月 双魚宮 月 巨蟹宮
19 太陽 太陽 太陽 獅子宮
20 審判 冥王星(火) 審判 月
21 世界 土星 世界 太陽
マイナーアルカナ
ワンド・・・火のエレメンツ
ペンタクルス(コイン)・・・地のエレメンツ
ソード・・・風のエレメンツ
カップ・・・水のエレメンツ
色の持つ意味
タロットカードに描かれた色には、それぞれちゃんとした意味が持たせられています。その伝統的解釈と意味を把握して忠実に再現させたのが、ウェイト(俗に言うライダー版タロット)のタロットといえるかも知れません。
赤・・・行動の原理
緑・・・栄養、実り
黄・・・精神、流動性
青・・・受身の原理
けれども、白黒のタロットにも傑作はありますこと、断っておきます。
シンボル
色ばかりではなく、タロットに描かれた人物のポーズ、表情や身体の向き、構図、小物、動物、背景など、それら全てにシンボルとしての意味があります。それはそのカードをそのカードとして意味を持たせている重要な小道具であり、シンボルです。また、タロットカードには占星術記号や各種シンボル、錬金術の記号、数字なども描かれており、これもタロットを読み解いていく上で、リーディングのキーワードになってくれます。
TAROTの神秘
ミリュエル・ドーリエンは、古代ヘブライの22のアルファベットは、天界の星座の数に由来し、文字と数字はカバラの象徴の中に隠されていると述べているそうです。また、ヘブライ語のトーラ TORAH(掟)は、TAROT(西洋ではTは発音しない)のアナグラムであり、ヘブライ語では右から左へと文字を書くので、タロットはトーラとなり、これがタロットの隠された意味であるとも。
ヘブライのアルファベット22、タロットのメジャーアルカナ22という数字はカバラの生命の樹、22のパス(径)に対応していたりもします。
また、アントニオ・ドラゴニは、メジャーアルカナのうち、0である愚者を除いた残り21枚は、ピタゴラスのいう完全数3に神秘数7をかけたものであり、タロットの77枚は7の11倍で、マイナーアルカナ56枚は7の8倍であると。
7という数字はトランスサタニアン(外惑星)を除く天体(太陽・月・水星・金星・火星・木星・土星)の数で、3はヘシオドスの黄金時代、白銀時代、青銅時代という2つの時代を象徴しているのだそうです。
上記の説は、タロットの一般的な秘教的な歴史と解説です。
実際のところ、タロットは元々占いの道具ではなく、
人類に伝えられてきた「私たち人間がなぜこの世に生まれてきたのか」という私たちがこの世に生まれてきた目的や宇宙創成の秘密、どのようにして私たちは生きていくべきなのか…
そのような人生の指標、創造的な意志との関係について、一部の人々に脈略と受け継がれてきた「霊的知識・真理」を
世代へと継承し伝えていくための教義(教本的な)図として描かれたバイブルのようなものでした(前述のベンバインダブレット)
ですが、モーゼの出エジプト記により、この図版に描かれた教義「霊的真理」を正確に教わってはいないユダヤ人たちにより、写し取って持ち出されたことから解釈の誤解が生まれることとなりました。彼らはユダヤの秘儀「カバラ」としてこの叡智を伝えましたが、それは本来の意味(知識)から曲解されて伝えられたことも多く、本来の意味とは異なる伝わり方をしてしまっています。
こうした「霊的真理」はエジプト文明にのみ伝えられたものではありませんが、エジプトという土地に伝えられたものからユダヤ人に流れ、それがヨーロッパ諸国に伝わっていったという意味ではエジプト起源説は誤りではないのです。
タロットは「霊的真理」の教義を教えるための解説図版を板に写し取ったもので(紙がなかった時代)、持ち運ぶために小さな板や羊皮紙などに移され、いつしか異端尋問などの追及を逃れるためにキリスト教的なシンボルを取り入れ、魔術的なシンボルと誤解される図版を別のものに書き換えられて、いつしかプレイングカードとして、占いの道具に用いられるようになったのです。
ですので、今わたしたちが手にすることのできるタロットは元の図版とは程遠く、原型をとどめるものはほとんどないので、占いの道具として発達してきた古代の図版を元にしたものとして用いて問題はないと思っています。
霊的真理の書 TAROT
【エソテリック・タロット】
タロットはもともと霊的真理(私たちが人として何故この世に降りてきたのか、魂の目的と終着点といった神聖なる計画)を携帯用に写し取ったもの。人間にまだ神性が残っていた頃、その生命の秘密を知る者たちが知識として何かしらの形に残して、後者のものたちに伝えていった。教えはやがて伝言ゲームのごとく歪んでいったが、唯一エジプト文明のアトン神殿においては、オリジナルに近い教義が伝えられていた。モーゼの出エジプト記のおりに壁画に描かれていた(本来は神官たちと王族のみ閲覧出来なかった)これらの教義をユダヤ人が混乱に乗じてあるいは少しずつ写し取って持ち出した。やがて彼らはこの絵として表された教義を伝えるのに、とてもコンパクトな紙に書き写して持ち歩くことを始めた。
タロットは、神聖なる計画(人類の生きる目的と魂への帰還の道)と輪廻転生の法則について、説明されている霊的真理の書である。